サス・ジョーダンさん死去、63歳 ― 『ボディガード』にも刻まれた、忘れられない歌声
時事2026/10/05

サス・ジョーダンさん死去、63歳 ― 『ボディガード』にも刻まれた、忘れられない歌声

写真:Damien D.「Sass Jordan at Luminato 2010 (6)」、Wikimedia Commons

力強い歌声でカナダのロックシーンを彩ったサス・ジョーダンさんが、2026年10月2日に亡くなった。Castanetなどによると63歳。家族に囲まれ、穏やかに最期を迎えたという。

死因は公表されていない。Castanetは、ジョーダンさんが9月に深刻な健康上の問題を理由として、年内に予定していた公演を取りやめていたと伝えている。ただし、病名や死去に至る詳しい経緯は明らかになっておらず、推測で結び付けるべきではない。

訃報を受け、音楽仲間やファンからは、その歌声と人柄を惜しむ言葉が寄せられている。

 


日本のリスナーには『ボディガード』という接点も

名前だけではすぐに思い浮かばなくても、映画『ボディガード』のサウンドトラックを聴いたことがある人なら、彼女の歌声に触れているかもしれない。

ジョーダンさんは、ジョー・コッカーとのデュエット曲「Trust in Me」で同作のサウンドトラックに参加した。ホイットニー・ヒューストンの楽曲に注目が集まりやすい作品だが、そこにはロックとソウルを結ぶ、もう一つの歌声の出会いが刻まれている。

追悼をきっかけにこの曲を聴き直せば、よく知るアルバムの中に、これまで意識していなかった歌手の存在を見つける人もいるだろう。


モントリオールから広がった音楽人生

英国バーミンガムに生まれ、カナダのモントリオールで育ったジョーダンさん。公式プロフィールによると、ポール・ロジャース、ボニー・レイット、ティナ・ターナー、チャカ・カーンら、ロックやソウルの歌い手から影響を受けた。

ソロデビュー作『Tell Somebody』の発表は1988年。翌1989年には、カナダの音楽賞ジュノー賞で有望な新人女性歌手を表彰する部門を受賞した。

その存在をさらに印象付けたのが、1992年のアルバム『Racine』と代表曲「Make You a Believer」だ。続く『Rats』では「High Road Easy」などを発表し、ロックシンガーとしての歩みを重ねた。

彼女の経歴には、エアロスミス、ローリング・ストーンズ、AC/DCといった名前も並ぶ。大きな会場で鳴り響くバンドの音に、自分の声で応えてきた歌手だった。


SNSに残る、声の向こう側の記憶

今回の追悼で印象的なのは、音楽への評価とともに、人としての魅力が語られていることだ。

Castanetが紹介したInstagramストーリーズでは、グレン・ヒューズが親しい友人を失った衝撃と悲しみを表した。同記事が取り上げたXの投稿にも、彼女の活力や優しさを思い返す言葉、音楽への感謝、家族を気遣う言葉があった。

また、Billboard Canadaが紹介したマイク・ガーソンのFacebook投稿では、共演したジョーダンさんの温かな心やユーモアが振り返られている。優れた歌手であると同時に、舞台の上でも外でも、一緒に過ごすことが楽しい人物だったという趣旨の追悼だ。

これらは報道で紹介された個別のSNS投稿であり、反応全体を数量的に示すものではない。それでも、仲間たちが惜しんでいるのは、録音に残された歌声だけではないことが伝わってくる。


テレビで知った世代、ブルースで出会った世代

ジョーダンさんとの出会いが、必ずしも1990年代のヒット曲だったとは限らない。

2003年から2008年まで放送された『Canadian Idol』では、全6シーズンにわたり審査員を務めた。自身がステージに立つだけでなく、新しい歌い手の挑戦を見届ける存在としても、視聴者に親しまれた。

後年には『Rebel Moon Blues』『Bitches Blues』といったブルース作品も発表している。キャリアを振り返ると、過去の代表曲を歌い続けるだけでなく、自分が惹かれてきた音楽に向き合い続けていたことが分かる。

Rock & Blues Museの追悼記事のコメント欄にも、近年になって彼女を知り、もっと早く出会いたかったと惜しむ読者や、実際の公演を懐かしむ読者の声がある。こちらはSNS投稿とは別の、記事に寄せられた反応だ。

長年のファンにも、最近知ったリスナーにも、それぞれの喪失がある。


いま、歌声から知るという追悼

ジョーダンさんの公式サイトには、「Music Is Medicine」という言葉が掲げられている。音楽には心を癒やし、人を元気づける力がある――そんな彼女の考えを表すメッセージだ。

今回初めて名前を知った人なら、まずは「Make You a Believer」、あるいは『ボディガード』の「Trust in Me」から聴いてみるのもよいだろう。ロックの勢いに惹かれたら『Racine』へ、ブルースに関心があれば後年の作品へと、入口はいくつもある。

訃報は、その人の音楽との最初の出会いになることもある。

サス・ジョーダンさんを知る人には、思い出の一曲を。まだ知らなかった人には、これから心に残る一曲を。その歌声を聴く時間もまた、彼女が残したものを受け取る一つの方法なのだろう。


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